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映画『グリズリーマン』クマに憧れ、クマに喰われた男のドキュメンタリー

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2005年に公開された映画『グリズリーマン(原題:Grizzly Man)』(※日本では劇場未公開)

クマに憧れ、クマと共に過ごし、最期はクマに襲われ絶命した一人の男の人生を描いたドキュメンタリー映画です。

なんと、監督はドイツ映画の巨匠 ヴェルナー・ヘルツォーク。これは期待できそうですね!

今回は、ドキュメンタリー映画『グリズリーマン』のあらすじと感想(※ネタバレあり)を紹介します(`・(エ)・´)ゝ

『グリズリーマン』とは?

あらすじ


13年間に渡って、アラスカの奥地でグリズリーを愛し続けた一人の男を描いたドキュメンタリー映画。

1957年、アメリカ・ロングアイランドの中流家庭に生まれたティモシー・トレッドウェル。学生時代は飛び込みの選手として名を馳せ、スポーツの特待生として大学に進学した。

しかし、大学時代に酒とドラッグに溺れ、アルコール依存症を発症し退学。その後は、俳優の道を目指しながらも人生を模索する日々が続いていた。

そんな時、彼が出会ったのがグリズリー(ハイイログマ)だったのである─。

クマに傾倒し始めたティモシーは、グリズリーの生息地で有名なアラスカのカトマイ国立公園に毎夏訪れ、クマの生態を熱心にフィルムに収めた。

撮影した映像を児童に無償で公開したり、グリズリーの保護団体「Grizzly People」を創設するなど、クマの保護活動に奔走するティモシー。

しかし、公園管理局のルールを破った行き過ぎた行動や、野生動物との境界線を超えた接し方に、世間の声は賛否両論であった。

「クマの領域を侵している」「寄付金目当ての環境保護家」といった批判が渦巻く中、その事件は起こるべくして起こってしまったのである。

グリズリーの保護活動13年目に突入した2003年。恋人のエイミーと共にアラスカを訪れたティモシーは、飢えたクマに襲われ喰われてしまったのだった・・。

スタッフ・キャスト

監督 ヴェルナー・ヘルツォーク
出演 ヴェルナー・ヘルツォーク
製作国 アメリカ
公開年 2005年
上映時間 103分

『グリズリーマン(原題:Grizzly Man)』とは、2005年に公開されたアメリカのドキュメンタリー映画。(※日本では劇場未公開)

野生生物保護活動家のティモシー・トレッドウェルがアラスカでグリズリーと共に過ごした映像記録を元に、彼の人生や知人のインタビューを交えながら語られた作品です。

熊に魅せられた一人の男を描いたユニークなこの作品は、ロサンゼルスとニューヨークの映画批評家協会賞でドキュメンタリー賞をダブル受賞しています。

ドイツ映画の巨匠が監督

画像出典:Wikipedia

監督・脚本を手掛けたのは、ドイツの映画監督・脚本家で有名な ヴェルナー・ヘルツォーク(Werner Herzog)

『アギーレ/神の怒り』(’72)や『フィツカラルド』(’82)などの代表作を生み出し、国際映画賞受賞の常連でもあるドイツ映画界の巨匠です。

怪優クラウス・キンスキーを起用したことでも有名で、ニュー・ジャーマン・シネマの担い手となった映画監督でもあります。

※「ニュー・ジャーマン・シネマ」とは、1960〜80年代にドイツ映画界で巻き起こったムーブメント。商業的な映画ではなく、芸術性を重視した映画製作を目指すことを目的とした。

そんな彼が「クマ」のドキュメンタリー映画を撮っていたこと自体驚きなのですが、いざ『グリズリーマン』を鑑賞してみるとこれまた一筋縄ではいかない内容・・。

単なるクマ映画の範疇に収まらず、ヘルツォークが得意とする「常軌を逸した人物」に焦点を当てた複雑なヒューマン・ドキュメンタリーに仕上がっています。

本作では、出演・ナレーションも全て担っているヘルツォーク。その淡々と語られる冷静な口調の中にも、彼のシニカルな視点がキラリと光る良作です。

音楽通も唸る豪華サントラ

画像出典:Wikipedia

『グリズリーマン』の音楽を担当したのは、イギリスのフォークバンド Fairport Convention(フェアポート・コンヴェンション)のギタリストで有名なリチャード・トンプソン(Richard Thompson)

ローリングストーン誌が選ぶ「偉大なギタリスト100人」にも選出された超名プレイヤーです。

全編ほぼアコギとエレキで奏でられた美しくも力強いギターサウンドが、アラスカに広がる自然の雄大さや厳しさを繊細に表現しています。

レコーディングには、ジム・オルークも参加しているという豪華な顔ぶれ!音楽通の方は、ぜひサウンドトラックも一聴してみてはいかがでしょうか。

映画の感想(ネタバレあり)

クマに人生を捧げた男

画像出典:映画『グリズリーマン』

映画の冒頭、広大な自然で優雅に食事をするグリズリーを背景に、まるでミステリーハンターのような饒舌な口ぶりでグリズリーを紹介するティモシー。

金髪のマッシュルームヘアにサングラス。奇妙な言い回しと少し自己陶酔した話し方から「ちょっと変わったナルシストな男」というのが第一印象。

特に何の前情報も入れず見始めたので、てっきりこれから彼とクマの交流を描いたもふもふ映像が観れるのかと思いきや・・。なんと、映画開始10分で「ティモシーがクマに襲われて死んだ」という衝撃の事実が告げられます。

画像出典:映画『グリズリーマン』

そこからは、彼の家族や知人、専門家などティモシーに関わった人物が登場。

ティモシーが撮影した映像を挟みながら、彼の生い立ち・人物像・死の真相が次々に明らかになっていく構成は、まるで一本のサスペンス映画を観ているような緊迫感があります。

特に、遺体の第一発見者であるパイロットの話は鬼気迫るものがあって恐ろしい・・。殺害現場に残ったのは、頭と背骨、腕時計が付いたままの片腕という生々しい証言が、いかに凄惨な事件だったかを物語っていますね。

検死した監察医がティモシーの死因や当時の状況を説明するシーンも中々の衝撃。ただ、監察医のおっちゃんの話し方があまりにも癖が強すぎて、途中から可笑しさが込み上げてきてしまったのは残念。

ティモシーの最期が録音された音声は映画内で公開されませんが、「聞かないほうがいい」というヘルツォーク監督の感想を聞く限り、相当悲惨なものだったのでしょう。

画像出典:映画『グリズリーマン』

死の直前に撮られた映像の中でも、クマへの賛辞を語っていたティモシー。この数時間後に、自分が人生を賭けて愛したクマに殺されてしまったのかと思うと、やりきれない思いが込み上げてきます。

映画のラストは、Don Edwards(ドン・エドワーズ)の名曲 “Coyotes” が静かに流れる粋なエンディング。


この曲をBGMに、二頭のグリズリーと共に歩き去るティモシーの後ろ姿は中々感慨深いものがありました。

エゴに満ちた保護活動

画像出典:映画『グリズリーマン』

自らを「動物を守り、愛し、尊重している」と語るティモシー。しかし、彼の行為は非常に独善的で矛盾とエゴに満ちているように見えます。

死にゆく蜂には同情し、死体に群がるハエは煙たがる。捕食動物の存在は考えずに、被食されたキツネの死のみ悲しむ・・。しまいには、干ばつを理由に川の石を移動させて水の流れを変えるなど、自然に反する行為も平然と行う始末です。

「野生動物を守りたい」と願うわりには、生態系を無視した自分勝手な行動ばかり。そもそも、カトマイ国立公園のクマはすでに連邦政府の管轄下で保護されているため、彼の保護活動自体「自己満足」の何者でもありません。

そんなティモシーの行為に対して、ヘルツォーク監督は大きな批判も擁護もせず、できるだけ中立な立場でいようと努めていたのが印象的。

しかし、自然の美しい映像は称賛しつつ、ティモシーの常軌を逸した奇行には冷静なナレーションでツッコミを入れるあたり、ヘルツォーク監督は彼の行動にかなり懐疑的であるように感じました。

公園管理局に対しFワードで罵るティモシーを「彼の怒りの表現は芸術的でさえある」と皮肉るくだりはなんともシュール。ヘルツォーク節炸裂のナレーションにも注目です。

ティモシーのココが凄い!

画像出典:映画『グリズリーマン』

学生時代に重度のアルコール中毒とドラッグ依存症に陥っていたティモシー。情緒不安定で虚言癖もあり、社会不適合者だった彼をどん底から救ってくれたのが「クマ」の存在でした。

そんなグリズリーたちが彼を仲間として受け入れていたかは疑問ですが、12年もの間なんの武器も持たず、たった一人でグリズリーのテリトリーで無事に過ごせたという事実は素直に凄いことだと思えます。

映像を見る限り、ほとんどのグリズリーが彼に敵意を示さず、キツネにも好かれていたところを見ると、ある程度野生動物に受け入れられていた(というか無害だから放置されていた?)のかもしれませんね。

しかし、その慢心と全能感が事件のきっかけになってしまったのでしょう。

また、グリズリーに襲われ瀕死の状態でありながらも、恋人のエイミーに「僕を置いて逃げろ!」と叫んだティモシーの行動も中々できるものではありません。

動物を傷付けることを嫌い、死ぬ間際に誰かを思いやることができるほど、優しい人間だったティモシー。

そんな彼が、馴染めなかった人間社会からも、自分の居場所を見出そうとした野生動物の世界からも弾き出されてしまった結末は、非常に悲しくもあり皮肉でもあります。

「クマのためなら死ねる」と語っていた彼は、果たしてグリズリーに殺されて本望だったのでしょうか。亡くなってしまった今となっては、その答えを知るすべはありません。

くまの感想(★★★★★)

大迫力のクマ映像

この映画は「クマ」というより「クマを愛したティモシーの人生」に焦点を当てられた作品ではありますが、グリズリーの迫力ある映像が多数収録されているのも魅力の一つ。

ヘルツォーク監督も絶賛している通り、雄大な大自然で純粋に生きるグリズリーの姿は非常に美しいものがあります。

優雅に戯れるグリズリーの姿は圧巻↓

画像出典:映画『グリズリーマン』

超無防備な姿でクマに接近するティモシー↓

画像出典:映画『グリズリーマン』

こんな巨大なグリズリーのマーキング姿も撮影↓

画像出典:映画『グリズリーマン』

特に私が一番印象に残った映像は、グリズリーのオス同士がメスを巡って争うシーン↓

画像出典:映画『グリズリーマン』

2mはある超巨大なグリズリーが、唸り、噛みつき、取っ組み合う!しかも、片方のオスグマはあまりの興奮に脱糞!!

糞を漏らしながらも必死に闘うその姿は、もはや野生の神秘すら感じます。

個人的には、この戦闘シーンが観れただけでも大満足。改めて、動物が懸命に生きる姿の素晴らしさを実感したのでした・・。

ぬいぐるみ男子ティモシー

野生のクマだけでなく、「くま」と言う存在自体を愛したティモシー。映画の中では、彼がどれだけくまを愛していたかがわかるシーンがたくさん登場しています。

小さい頃から大のテディベア好き↓

画像出典:映画『グリズリーマン』

少年ティモシーのあどけない笑顔が眩しいです。

ティモシーの実家もくまだらけ↓

画像出典:映画『グリズリーマン』

これは、ヘルツォーク監督が両親に集めさせた感じが否めませんが・・(笑)

なんと、キャンプ地にまでテディベアを連れて行く溺愛ぶり↓

画像出典:映画『グリズリーマン』

ただでさえ荷物が多い長期キャンプに、こんな大きいテディベアを持っていくなんて相当なくま好きだと思われます。

嵐の中、テディベアと寄り添って眠るティモシー↓

画像出典:映画『グリズリーマン』

たった一人で荒野の中を過ごすのは、きっと寂しかったのでしょう。

こういう映像を見ると、同じくま好きとしてどこか通ずるものを感じますね〜。大人になってもくまのぬいぐるみと寄り添うティモシーの姿は、まるで自分を見ているかのようです(笑)

とはいえ、私は本物のクマも好きですが、やはり「かわいい」というより「恐ろしい」イメージの方が強いので仲良くなりたいとは思いません・・(´-(エ)-`)

ちなみに、ティモシーの元恋人の耳元にもくまさんがキラリ↓

画像出典:映画『グリズリーマン』

小さくてあまりよく見えないかもしれませんが、こんな感じのイヤリングを付けています↓


めちゃくちゃかわいいピアスですね〜♡ ちょっと欲しいと思ってしまいました!

グリズリーは凶暴なのか?

映画のタイトルにもなっているグリズリー。作中でも、その大きな体と筋骨隆々で屈強な姿が印象深かったと思います。

とはいえ、ティモシーが撮影したフィルムからも伺えるように、彼が近づいたり触ったりしても威嚇する様子はあまり見られません。

実際のところ、グリズリーとはどんなクマなのでしょうか。そこで、グリズリーの簡単なスペックや特徴を調べてみました。

グリズリーとは?
グリズリー

画像出典:Wikipedia

名称 ハイイログマ
体長/体重 1.5〜2.5m/250〜350kg
分布 北アメリカ
寿命 約20年

別名「アメリカヒグマ」とも呼ばれ、ヒグマの亜種に分類されます。

木の実・野いちご・果実といった植物から、ヘラジカ・トナカイなどの大型動物も食べる雑食性。秋頃には、遡上するサケを食べることでも有名です。

オオカミやピューマから獲物を奪うこともあるそうで、日本のヒグマやアメリカグマ(通称ブラックベア)よりも獰猛な性格と考えられています。

以前こちらの記事でも言及しましたが、基本的にクマという生き物は臆病な性格で、自ら率先して人間を襲うことはほとんどありません。しかし、子連れのメスや、好奇心旺盛な若いクマ、人間を恐れなくなったクマは襲う確率が上がります。

ちなみに、ティモシーを襲ったグリズリーは28歳の年老いたオスのクマでした。

人間を襲うクマの特徴に当てはまらないようにも見えますが、実はティモシーとエイミーがクマに襲われた時期(10月)というのは、冬眠準備のために食料を求め気が立っているクマが多いそうです。

おそらく、彼らを襲ったグリズリーも巣ごもり前で飢えており、身近にいた二人を食べてしまったのでしょう。

ティモシーは「野生のクマと友達になれる」と考えていましたが、私はそうは思いません。知床半島のようにクマと人間の境界線を明確にしない限り、野生のクマとの共存は実現しないと思います。

ヘルツォーク監督が最後に言及したように「野生のクマにあるのは食への執着だけ」というのが真実なのかもしれません。

視聴方法

最後に、『グリズリーマン』の視聴方法をまとめてみました。

動画配信サービス

Amazon Prime Videoにて配信中です。(※2021年1月現在)

DVD / Blu-ray

残念ながら、『グリズリーマン』のDVD・ブルーレイは海外版の販売のみとなっています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
ティモシーの勝手な行動には批判的な意見も多いと思いますが、ドキュメンタリー映画としては非常に面白い作品でした。

特に、ティモシーが撮影した大迫力のグリズリー映像は本当に美しく見応え十分!人生をかけて撮り溜めた彼の集大成とも言える映像は一見の価値があります。

多くの人に迷惑をかけ、最愛の恋人まで道連れにしてしまったのは残念ではありますが、貴重なグリズリー映像を残したことは彼の功績かもしれませんね。

以上、ドキュメンタリー映画『グリズリーマン』のご紹介でした(´・(エ)・`)

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